人手不足・カネ余りのような事象も散見され、「不況」という文字は影を潜めている印象もあります。過去20年間の業況DIを見ながら、事業のリスク耐性を再確認することも重要と考えます。
説明のポイント
- 過去20年の業況DIを紹介
- リスク耐性の再点検の必要性を伝えている
東京都「都内中小企業の景気動向」
東京都産業労働局は、東京都の中小企業を対象として、「都内中小企業の景気動向」を毎月発表しています。
この発表は、業況DIと業況見通しDIが掲載されています。これらは、景気の動向を見る一つの指標であるといえます。
なお、下の画像は「全体」のDIですが、これ以外にも業種別、業種区分別のDIも掲載されています。
業況DIの20年チャート
毎月発表されている「全体の業況DI」は、過去10年間の掲載になっています。これに手を加えて、過去20年間分のDIにしてみました。
以下が、そのDIです。
業況DIとは、企業回答で「よい」から「わるい」を差し引いたもので、景気の動向を指し示すものです。
過去の不況は?
過去20年のあいだに「不況」は、4回ありました。ここでいう不況とは、内閣府認定の景気後退期を指します。
代表的な不況は、1998年「アジア通貨危機」で、業況DIが「-60」を下回っています。
また、2008年~2009年は「サブプライムショック」で、業況DIが「-70」を下回るという、すさまじい不況でした。
その後の10年間においては、東日本大震災(2011年)を経ても、DIはほぼ右肩上がりとなっています。2018年6月の全体の業況DIは、「ー21」となっています。
規模の大きさとDI
DIを比べてみてわかるのは、企業の規模が大きいほど、DIもよいという傾向です。
これから創業するひとは、この点を心に留めておく必要があるでしょう。小さい企業ほどリスク耐性は低いのは当然であり、先行きにも慎重な姿勢になります。
将来への備えは万全か
「好景気はオリンピックの直前まで」などと、まことしやかにいわれることもありますが、筆者はアナリストでも占い師でもありませんので、将来を予測することはできません。
ただし、過去に何があったかを知ることで、将来に備えることはできると考えます。
このDIをブログに取り上げようと考えたのは、もう10年も、右肩上がりの業況DIがつづいているからです。
過去のDIの動向を見るとわかるとおり、不景気は突然に訪れます。過去10年間ゆるゆると登ってきたDIは、ふたたび過去と同じように、いずれ急降下する恐れもあるのです。
リスク耐性の再確認を
経済の先行きを見通すことは難しいわけですから、事業に対するリスク耐性を再点検しておくことは常に必要でしょう。
- 事業計画は強気すぎないか?
- 事業資金の確保は十分か?
- コストは過大になっていないか?
- 新事業の撤退コストは考慮されているか?
とはいえ、好景気のもとでは、このような警鐘はほとんど相手にされません。「戦う前から、逃げることを考えている臆病もの」とバカにされることもあります。
現在の世間の動向を見ても、不況下ではありえないような強気の行動・発言が散見されるようになっています。「そんないさましい人を見た」という経験は、だれでも一度はあることでしょう。
これも、右肩上がりの景気が10年間もつづいた影響なのでしょうか。
事業や生き方をすべてを守りだけで進めることはできませんし、チャンスをねらって虎穴に入る勢いも、ときには必要です。
ここでいいたいのは、リスク耐性を再確認しておくことも重要である、ということです。過去のDIを振り返ると、やがていずれは不況が訪れることを再認識させるものといえるでしょう。
まとめ
過去20年間の都内中小企業のDIチャートをもとに、リスク耐性の再点検をうながしました。
現在の好景気は本当にすばらしいことですし、その状況下でビジネスができることは本当に幸せといえるでしょう。
不況のことばかりを考えてマイナス思考になる必要はありませんが、心のどこかで「いましめ」の気持ちもあわせ持っていたいものです。