振替納税とダイレクト納付の利用届出が、e-Taxで可能に

2019年12月20日に閣議決定された「令和2年度税制改正の大綱」より、気になるトピックスを採り上げます。

基本的な内容は新聞報道等で一覧できますので、このブログでは、そのような報道では紹介されない注目点を紹介します。

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納税に関する利用届出が、e-Tax経由で可能に

今回は、これまで紙ベースの申請に限定されていた「振替納税」と「ダイレクト納付」について、e-Taxでの申請を可能にする改正を紹介します。

大綱の記述

税制改正大綱の記述を引用します。

1 振替納税の通知依頼及びダイレクト納付の利用届出の電子化
振替納税の通知依頼及びダイレクト納付の利用届出について、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により申請等を行うことを可能とするとともに、その振替納税の通知依頼及びダイレクト納付の利用届出に係る情報を送信する際、その申請等を行う者の電子署名及び電子証明書の送信を要しないこととする。
(注)上記の改正は、令和3年1月1日以後に行う申請等について適用する。

これまでの経緯と解説

国税の納税方法のうち、「振替納税」とは、いわゆる口座振替で納税する方法です。これは個人の納税者のみで認められており、申告書を提出すれば、そのまま引き落としも自動で行われます。(書面の申告書を提出した場合でも対応可能)

一方、「ダイレクト納付」は、個人と法人の両方で対応できる納税方法で、e-Taxで送信したあとに、その申告内容の税額に連動して口座引き落としができます。(書面提出では対応不可)

これらの「振替納税」と「ダイレクト納付」は、紙の納付書を使わずに納税ができますし、インターネットバンキング契約も不要ですので、いずれも納税方法として汎用性・利便性が高いものです。

しかし、この納税方法を申請するためには、紙の申請書を税務署に郵送する必要がありました。

引用[手続名] 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付(国税庁)

この改正が実現すれば、紙の書類で利用届出を郵送せずとも、e-Taxにて利用届出を送信することが可能となります。

また、その利用届出の送信にあたっては、電子署名は不要とされています。

改正が適用されるのは、2021年(令和3年)1月1日以後の申請とされています。よって、この記事執筆の直後である「令和元年分」の申告(2020年3月16日期限)には対応していません。

「キャッシュレス納付」の割合を引き上げたいという目標

税制調査会の資料を読むと、2025年の「キャッシュレス納付」の割合を40%に引き上げることが目標とされています。

この「キャッシュレス納付」という用語は、これまでにあまり耳慣れないものです。

金融機関の口座からの「電子納税」に、口座振替である振替納税や、クレジットカード納付を含めたものをまとめて、イメージ的にわかりやすくしたものといえそうです。

引用第24回税制調査会(2019年8月27日)資料

とくにダイレクト納付の役割は、重要です。

納税の割合をみると、法人の源泉所得税の納付に係る割合が大きいことから、ダイレクト納付の利用が促進されれば、電子納税の割合も一気に高まる可能性があります。

「利用届出の電子化」とは、口座振替契約までを指す言葉か?

ここで疑問に思うのは、この改正案で示された「利用届出の電子化」とは、具体的にどのようなものか、ということです。

具体的には、納税に関して金融機関との口座振替契約が締結されるまでには、次のパターンが考えられます。

  • 利用届出はe-Taxで送信し、そこで発行される口座振替依頼書に銀行印を押して、金融機関に郵送する方式(現行のeLTAXのダイレクト納付申請と同様の申請方法)
  • 利用届出をe-Taxで送信し、さらに金融機関の口座振替契約をWEB上から実現する方式(東京都の「Web口座振替申込受付サービス」に似た方法)

税制改正大綱を読むと、あくまで「利用届出を電子化」するといっているだけにすぎず、口座振替の契約までもネットで申し込みできる、ということまでは明言されていません。

過去の税制調査会の資料を読み直しましたが、やはり「利用届出の電子化」としか書かれておらず、WEB上での口座振替契約に言及されていた部分は見つかりませんでした。

現時点で納税の口座振替契約がネット上でできるのは、筆者の知る限りでは東京都の「Web口座振替申込受付サービス」だけです。

ある有名会計事務所の税制改正大綱の解説では、e-Taxの利用届出後に金融機関の画面に遷移し、WEBで口座振替契約ができることと、本人確認は金融機関の認証で実現するとありました。

これは大綱では読み取れない具体的な解説で、突出した印象を持ちました。(独自入手の情報でしょうか?)

もしWEB上での口座振替契約が実現するなら、口座振替やダイレクト納付の申請方法としては、非常に利便性が高いことになります。

まとめ

「令和2年度税制改正大綱」から、振替納税とダイレクト納付の利用届出をe-Taxで送信できる改正をお伝えしました。

この改正は、2021年1月1日以後の申請から適用されます。

口座振替やダイレクト納付の利用届出がe-Taxでできるのは、手続きとしての間口が広がるため、納税者の利便性を高めるものとして評価できる改正でしょう。

注目点としては、e-Taxで利用届出後における口座振替契約が「紙の口座振替依頼書に銀行印を押して金融機関に郵送」なのか、それともWEB経由で可能なのか、という点といえます。

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