電帳法Q&Aの考察【1】電子取引Q&Aで削除された部分が惜しい

令和3年度税制改正により、電子帳簿保存法の抜本改正が行われます。これにあたり、国税庁から提供されている一問一答(Q&A)も改訂が行われました。

今回の記事では、改訂が行われた電子取引の解説のうち、前年版Q&Aから削除された部分に着目します。

説明のポイント

  • 国税庁の電子帳簿保存法Q&A(電子取引)において、令和2年版であった項目が削除された部分がある。「電子取引」と「自己が一貫してコンピュータで作成」との境目を示していたが、承認制度がなくなったことで削除されたと思われる。
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電子取引Q&Aで削除された箇所がある?

前回の令和2年版における電子帳簿保存法Q&A(電子取引)で説明されていた「問8」が、令和3年版のQ&Aでは削除されています。

どのようなQ&Aだったのか、再読してみましょう。

(令和2年版)電子取引
問8 当社は電子計算機を使用して請求書を作成し、クラウドサービスを利用して取引先に電磁的な請求書を発行しようと考えておりますが、税務署に対して申請書を提出する必要がありますか。

【回答】
電子取引を開始する場合には、税務署に対して申請書を提出する必要はありません。
なお、当該請求書を書面に出力し、郵送等(委託の場合を含む。)により取引先に対して発行する場合に、請求書(控)を紙で保存する必要がありますが、紙ではなく電磁的記録等により保存を行うときは、書類の保存に代える日の3か月前までに法第4条第2項に係る「国税関係書類の電磁的記録等による保存の承認申請」等の提出が必要となります。

このQ&Aは、請求書作成ソフトを用いて請求書等を電磁的に作成した場合の取扱いが説明されています。

これによると、改正前までの内容では、

  • 電磁的な請求書を発行した場合 →電子取引に該当(承認申請は不要)
  • 書面に出力して郵送した場合 →原則は控えを紙で保存(承認申請は不要)、特例として電子保存可能(要承認申請)

という扱いが示されていました。

なぜ削除されたのか?

「自己が一貫してコンピュータで作成した場合」において、承認制度がバッサリと廃止されたため、解説する意味にとぼしいと判断されたのではと思われます。

Q&Aの尋ね方を見ても「税務署に対して申請書を提出する必要がありますか」という形式でしたので、承認の必要性が主眼になっていました。

筆者意見

以下、筆者の意見です。削除されたQ&Aは、承認制度とは別の視点で重要な解説だったものと考えています。

どこが重要かというと、「電子取引」と「自己が一貫してコンピュータで作成した場合」では、どこが違うのかという境目を示していた点です。

国税庁Q&A「電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係」を読んでも、電子取引とコンピュータ作成について、どのように違うのかを解説された箇所はほとんど見当たりません。

 

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出典電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和3年版)P.4

改めて、前述の令和2年版の国税庁Q&A問8を読み直してみましょう。

電子取引を開始する場合には、税務署に対して申請書を提出する必要はありません。
なお、当該請求書を書面に出力し、郵送等(委託の場合を含む。)により取引先に対して発行する場合に、請求書(控)を紙で保存する必要がありますが、紙ではなく電磁的記録等により保存を行うときは、・・・(後略)

太字で示した部分に着目してみると、制度の違いがわかります。

承認の有無ではなく、制度における「区分の違い」という点で考えると、この解説が貴重なことに気づくことでしょう。

請求書等を紙で郵送した場合(電子取引には該当しない)であっても、出力時点までの作成が電子データである場合には、「自己が一貫してコンピュータで作成した場合」に該当する可能性もあることがこのQ&Aで確認できるためです。

請求書をパソコンで作成してインターネット経由で送れば、「電子取引」に該当するため、保存すべき控えは電子データです(令和3年までは紙保存も可)。

しかし、紙に出力して郵送した場合は、電子取引に該当しません。この場合、請求書作成ソフトのデータが「自己が一貫してコンピュータで作成した場合」に該当するかで検討します。

令和3年までは「自己が一貫してコンピュータで作成した場合」は、承認がなければ電子データによる保存は認められませんでしたが、令和4年以降は保存要件を満たすことで、電子データのままの保存が可能です。

承認制度がなくなっても、これらの区分の違いを理解する上では、やはりこうした違いに関する説明がQ&Aに用意されていたほうがよいと考えます。

まとめ

国税庁の電子帳簿保存法Q&Aから、令和2年版と令和3年版の違いに着目しています。

今回の記事でご紹介したとおり、令和2年版の電子取引で説明されていた一部の内容が、令和3年版で削除されていました。

削除された理由は承認制度がなくなったためと思われますが、「電子取引」と「自己が一貫してコンピュータで作成した場合」の違いという視点でみると、貴重な解説だったため、削除されたことが惜しまれます。

次の記事では、請求書作成ソフトを利用している場合に、令和3年度改正でどのような変化があるかを考察します。

令和3年度税制改正により、電子帳簿保存法の抜本改正が行われます。これにあたり、国税庁から提供されてい...