旧民主党はインボイス「賛成」でも、立憲は「反対」の不思議

ふと思い出したのですが、旧民主党が政権交代前に主張していた政策のなかには、インボイス制度の導入があったと記憶しています。

この記憶が正しかったのかを確認のため、調べてみました。

説明のポイント

  • 旧民主党はインボイス制度の導入を主張していたが、2022年現在の立憲民主党は導入に反対の立場
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旧民主党の政策アーカイブと税制改正大綱

律儀なことですが、旧民主党の政策集は、アーカイブとしてインターネットで閲覧することが可能です。

アーカイブをもとに調べてみると、旧民主党は政権交代前において、一貫してインボイス制度の導入を主張していました。

仕入税額控除についてインボイス制度を導入することにより、消費者の負担した消費税が適正に国庫に納税されるようにします。(民主党政策INDEX2005

インボイス制度(仕入税額控除の際に税額を明示した請求書等の保存を求める制度)を導入することにより、消費者の負担した消費税が適正に国庫に納税されるようにします。(2007政策リスト

インボイス制度(仕入税額控除の際に税額を明示した請求書等の保存を求める制度)を早急に導入することにより、消費者の負担した消費税が適正に国庫に納税されるようにします。(民主党政策集INDEX2009

政権交代後の民主党政権下における税制改正大綱(平成22年度~24年度)を探してみたところでは、インボイス制度の導入について言及された記述は見当たりませんでした。

立憲民主党は反対ですが……

現在の立憲民主党を旧民主党の後継政党と考えるかですが、筆者は後継政党と判断しています。旧民主党政権時の総理大臣経験者2名が、党の最高顧問に就いていることがその理由のひとつです。

その立憲民主党について、2022年参議院選挙の政策集を見ると、

2023年10⽉導⼊予定の適格請求書等保存⽅式(インボイス制度)については、免税事業者が取引過程から排除されたり、不当な値下げ圧⼒を受けたり、廃業を迫られたりしかねないといった懸念や、インボイスの発⾏・保存等にかかるコストが⼤きな負担になるといった問題があることから、廃⽌します。

とあり、インボイス制度の導入に反対の姿勢を示していました。

これを見ると、旧民主党時代の主張とは正反対になっています。

インボイス制度の導入のきっかけは、消費税に軽減税率が設けられたためです。この軽減税率の導入を強く主張したのは、公明党といわれています。

その流れでいえば、軽減税率に反対だからインボイス制度の導入にも反対する、ということはわかります。それでも、旧民主党では「インボイス制度導入」を主張しており、2009年では「早急に」とまで述べたわけですから、やはり違和感はぬぐえません。

なお、立憲民主党の2019年政策集ではインボイスに言及はなく、2021年政策集では導入延期を主張しています。もし「軽減税率反対=インボイス反対」であれば、もっと早い時点でインボイス制度導入に反対を主張していないと違和感があります。

インボイス制度導入で免税事業者が不利になるのは前からわかっていた

国際比較でいうと、諸外国ではインボイス制度が設けられていることが当たり前のようです。

財務省資料には「・・・日本及び付加価値税の存在しない米国を除くOECD諸国ではインボイス制度が導入されている」とあります。

この点を見れば、国際比較で日本の税制が劣るためとして、旧民主党がインボイス制度の導入を早急に、と主張していたのであれば、その点は理解できます。

しかし、インボイス制度を導入すれば、免税事業者が不利になることもあらかじめわかっていたはずです。

例えば、税務大学校の論文「消費税の複数税率化を巡る諸問題」(望月俊浩、平成15年(2003年))には、

EU型のインボイス方式を採用するとすれば、この免税事業者の取引排除の問題はやむを得ないものと割り切るしかない。取引排除を免れようとする免税事業者は課税選択を行い課税事業者となることとなる。

という指摘がすでにありました。

この経緯をみる限り、仮に「自公政権のインボイス制度は、自分たちが考えていたものとは違うから反対だ」という話であっても、無理のある主張といえそうです。

賛成から反対になることは通常ありえない

そうとはいえ、10年以上前の意見と今を見比べて、同じ意見ではないことを指摘するのは野暮かもしれません。

筆者も10年以上前と同じ意見を持ち続けているかといえば、その自信はありません。意見が変わるのも、他人の意見に耳をかたむけた結果、ということもあるでしょう。

それでも、インボイス制度に積極的に賛成だったスタンスが、その後反対に変わるというのは、通常は想定されません。

なぜなら、賛成した当時に「インボイスのもたらすデメリットを認識していなかった」という不見識を告白しているのと同じだからです。

まさか、当時の旧民主党が「流行り物」としてインボイス導入を主張していたとは思いませんし、税制改革の必要性から主張していたものと思われますが、このあたりは2000年代当時の資料を検証する必要があるでしょう。

現在の立憲民主党にも税制調査会があるでしょうし、過去の旧民主党が掲げた政策とも当然に比較はしているでしょう。

上記の矛盾を考慮してもなおインボイス反対を2022年に掲げたのは、党内の力学が優先された結果のようにも見えますが、これはあくまで個人の見方です。

まとめ

旧民主党の政策案のなかで「インボイス制度導入」とあったブログ筆者の記憶が正しいか、これを確認したメモを載せておきました。

昨今話題のインボイス制度ですが、その導入については以前から課題として存在していたこともわかります。

旧民主党はインボイス導入を主張していましたが、後継政党の立憲民主党はインボイス導入に反対という立場のようです。ただし、後継政党になって、なぜ反対に変わったのかはわかりません。

旧民主党と立憲民主党では、時点、所属議員、立場が異なるとしても、その主張がまるで正反対になるというのは、さすがに奇妙な印象を覚えました。

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