当ブログでは国の財政について考える記事をいくつか投稿してきました。
記事作成のときに参考したのが、財務省の作成しているパンフレット「これからの日本のために財政を考える」です。わかりやすい資料としておすすめです。
今回、この「これからの日本のために財政を考える」について、改訂版をいくつか読み比べてみたのですが、微妙に違いがあることに気づきました。
国債や通貨への信認が失われるリスク
昔のバージョンをみると、<「借⾦」の問題点>として、財政悪化について「国債や通貨への信認が失われるリスク 」という項目があるのですが、これは2023年4月版から追加されていました。
その前の2022年10月版でも、似たような記載が別にあったので、より強調したように読めます。
金利動向と財政運営
「金利動向と財政運営」の項目は、最近の金利の上昇を受けて、かつてあった「低金利環境がいつまでも続くとは限らない 」といった記載はなくなり、記載も若干マイルドになっています。
ただし、編集が若干変わって、項目の位置としては前のほうに記載され、「厳しい財政事情」として書かれるようになっています。
「低金利環境がいつまでも続くとは限らない 」が終わったとすれば、そこで警鐘が鳴らされていた「仮に金利が上昇した場合、利払費が増えて、政策的経費がさらに圧迫される可能性があります」という時期に移行したことになるのでしょうか。
また、2023年10月版までは、
国債の信認と安定消化は財政健全化努力の賜。「信認されているから健全化不要」との主張は本末転倒です
国債の信認が失われれば、通貨の信認や金融機関の財務状況にも悪影響を及ぼします。たとえ、自国通貨建債務でも資本逃避のリスクが存在します
という記載があり、なかなか気合の入ったビンタのような主張だな……と思っていましたが、2024年4月版でこの部分は消えています。
さきほどの「国債や通貨への信認が失われるリスク」と主張のダブりがあるので、カットされたのかもしれません。
あわせて、2023年10月版までは載っていた「主要格付け会社による日本国債格付けの推移」も、2024年4月版では見られなくなりました。
個人的には、日本国債の格付けが今後どうなるのか、気にしています。
国内でしか通じそうにない甘い見通しを主張する人も見かけますが、日本人どうしでワーワーいいあっても、けっきょくは仲間内の議論にすぎません。しかし、国際的な格付けはグローバルスタンダードで容赦なく評価されるでしょう。
国内債券がメインで運用されている投資では、もし格付けが下がれば苦しくなりそうです。金利も一段と上昇するかもしれません。
増大する社会保障費をどうするか
財務省からのメッセージは、このようなわかりやすい資料に集約されていると思います。
結局のところ、財政の悩みは「日本の財政赤字は、少子高齢化を背景とする社会保障関係費の増大という構造的なものが原因です」(2023年10月版)に集約されるのでしょう。
つまり、論点はとにかく社会保障費が増えまくることに尽きるわけで、財務省やその職員を口汚く罵ってもほとんど意味はなさそうです。もし財務省の職員が明日から全員別の人に変わったとしても、社会保障費は変わらず増え続けるでしょう。
一部の政党が社会保障費を下げる方向に取り組んでいますが、このような動きに注目していきたいところです。