2020年6月下旬、「年末調整手続の電子化」について、新たなFAQとパンフレットが国税庁ホームページで公表されました。これらの資料をもとに、新たにわかった点を整理します。
前回の記事からの続きです。
説明のポイント
- 年末調整ソフトの仕様で新たに明らかになった点の紹介
- 会社情報のXMLデータを配布して、従業員に読み込んでもらうことが可能
- 同年度の年末調整ソフトでは別PCにデータを移行できない
新FAQとパンフレットで新たにわかったこと
【5】年末調整ソフトの仕様「会社情報ファイルを配布できる」
「年末調整ソフト」プロトタイプ版ver0.7の管理者メニュー画面を見ると、「給与支払者情報インポート」「給与支払者情報エクスポート」という機能があります。
この操作ですが、開発者向けFAQ問1-6によると、
これらは各従業員が、給与支払者の情報の入力を省略するための機能です。はじめに、勤務先の給与担当者は、「管理者・給与担当者メニュー」で給与支払者情報を登録の上、「給与支払者情報のエクスポート」機能によりエクスポートしたXMLデータを従業員に配付します。その後、従業員は配付されたXMLデータを「給与支払者情報のインポート」機能によりインポートすることで、給与支払者情報の入力を省略することができます 。
とされています。
つまり、会社情報のあるXMLファイルを配布しておき、従業員で読み込んでもらうことが可能ということです。
年末調整ソフトからエクスポートすると、「shiharaisya.xml」というファイルが出力できますので、これを配布すればよいでしょう。
なお、通常のFAQ問5-8では、「年末調整ソフト」にあらかじめ会社情報を登録し、ソフトそのものを各従業員に配布する方法が示されていました。
これとは別の方法で、ソフトは配布しないが、会社情報だけをXMLデータで配布することも可能、ということのようです。
【6】年末調整ソフトの仕様「作成途中のデータを別PCに移すことはできない」
従業員が自分のパソコンで作成したが、なんらかの理由で、別のパソコンにデータを移動させて作成を継続したい……という要望もあるかもしれません。
しかし、開発者向けFAQ問1-8によると、現年度分の控除申告書データをインポートする機能は有していないと書かれています。
つまり、作成途中データを、他の年末調整ソフトに移すことはできません。
なお、前年分の過去データを読み込んで、当年分に反映させる機能は設けられるようです。
ただしこれは令和3年版から提供されるため、今回が初めての提供となる令和2年版では利用できない機能です。
(下の画像にある「前年に作成した控除申告書データ一括インポート」が該当と思われる)
【7】年末調整ソフトの仕様「パスワードのある・なしのファイルが両方出力されるのはなぜ?」
年末調整書類をデータ出力する場合に、「パスワードをかける」を選択すると、暗号化されたzipファイル(pass.zip)と、暗号化されていないzipファイル(nopass.zip)の2つが同時に出力されます。
パスワードをかけたのに、なぜパスワードのないファイルも同時に出力されるのかが、微妙に疑問でした。
この点ですが、開発者向けFAQ問1-9を見ると別に意味はないようで、どちらかのファイルを利用すればよさそうです。
電子メールや、USBメモリなどでファイルを受け渡しする場合は、暗号化ありのpass.zipを利用します。
一方、社内LANなど従業員ごとに区分された領域にファイルを保管して給与担当者が受け取る場合や、社内LANでのメール送信であれば、ファイルの暗号化は不要ですので、nopass.zipを利用します。
(ただし、「パスワードのないzipファイルを渡してください」と従業員に周知しているところ、年末調整ソフトにおけるファイル出力では「パスワードをかける」という選択肢が表示されるため、微妙に混乱を招く可能性もありそうです。周知に配慮が必要かもしれません)
まとめ
2020年6月下旬に国税庁ホームページで新たに追加された、年末調整ソフトに関する情報について整理しました。
年末調整ソフトの利用を検討している会社は、早めに触って仕様を確認することをおすすめします。
進行中の情報を手探りで整理すると間違いを含む可能性もあるため、記述には勇気が必要ですが、当ブログでは研究姿勢を重視しています。