2023年10月からスタート予定の「インボイス制度」。この制度で目新しいのは、インボイスの範囲に「電子インボイス」が含まれていることです。
そこで、電子インボイスについて現状わかっていることを整理し、今後増えてくるであろう情報を理解しやすくする記事を書いておきます。
説明のポイント
- インボイスの交付にあたり、書面の代わりに電子インボイスを提供できる
- 電子インボイスは、これから策定される「標準仕様」の電子インボイスのほかに、構造化されていないPDF形式なども含む
電子インボイスとは?
まず整理したいのは、消費税法における「電子インボイス」の位置づけです。
令和5年10月施行予定の新消費税法を見ると、電子インボイスについては次のように書かれています。
少し長いですが、引用します。
(適格請求書発行事業者の義務)
第五十七条の四5 適格請求書発行事業者は、適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書の交付に代えて、これらの書類に記載すべき事項に係る電磁的記録(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律第二条第三号(定義)に規定する電磁的記録をいう。以下この条から第五十七条の六までにおいて同じ。)を提供することができる。この場合において、当該電磁的記録として提供した事項に誤りがあつた場合には、前項の規定を準用する。6 適格請求書、適格簡易請求書若しくは適格返還請求書を交付し、又はこれらの書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を提供した適格請求書発行事業者は、政令で定めるところにより、これらの書類の写し又は当該電磁的記録を保存しなければならない。この場合において、当該電磁的記録の保存については、財務省令で定める方法によるものとする。
これを読むと、まず紙の適格請求書等の交付が前提としてあって、その交付に代わるものとして電磁的記録を提供できるということです。
つまり、電子インボイスとは略称であり、正式な名前としては「適格請求書等に記載すべき事項に係る電磁的記録」になります。
そして、電子インボイスを提供した場合も、当然に保存の義務が課されます。
ちなみに、ここでいう「電磁的記録」については、電子帳簿保存法の定義が参照されています。
電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によっては認識することができない方式(電磁的方式)で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。
電子インボイスは単なるPDFも含む
この記事の執筆時点でわかっている情報としては、経理・会計ソフトを提供する各社が集まった「電子インボイス推進協議会」という団体があります。
この協議会においては、電子インボイスについて「日本標準仕様」が策定・公開される予定とのことです。(参照:2020年12月付リリース)
この標準仕様のインパクトが大きいことから、「電子インボイスとは、この協議会が策定するもの」というイメージにとらわれそうになります。
しかし、標準仕様の電子インボイスはあくまで、構造化されたフォーマットをソフト各社において共通化しようという試みです。
つまり、これだけが電子インボイスを指すということではありません。
何がいいたいのかというと、たとえば現行でも流通しているPDFの請求書等も、適格請求書等の記載要件を満たせば電子インボイスに該当するということです。
前述のとおり、電子インボイスの定義とは「適格請求書等に記載すべき事項に係る電磁的記録」ですから、記載すべき事項が電磁的記録に含まれれば、電子インボイスに該当します。
ただし、PDFのようなデータは構造化されておらず、そのデータを受け取ってもそのまま経理等には活用できません。取引先や金額などのデータは、再度手打ちする必要が生じます。
現時点でいえば、これは当たり前の話でしょう。「なに得意気にいってんだ」みたいに思われそうです。
しかし、2021年6月に発表予定とされている「標準仕様」から、電子インボイスを考え始めた場合はどうでしょうか。
標準仕様が当たり前のように見えることから、電子インボイスの範囲の理解もあやふやになるはずです。こうした点にはあらかじめ留意が必要でしょう。
まとめ
今後の消費税に影響するインボイス制度のうち、電子インボイスについて理解を整理する記事を書いています。
今回の記事では、新消費税法における電子インボイスの定義について確認しました。
また、電子インボイスとは、これから策定される共通仕様の電子インボイスのほかに、構造化されていないデータ(PDF形式など)も含むものであることを述べました。
次回は、電子インボイス推進協議会が策定・公開する日本標準仕様と、そのなかで導入される国際規格「Peppol(ペポル)」がどのようなものかを確認します。