税金が払えなくても、放置してはダメ! 税務署や自治体に相談しに行くこと

相談員のイメージ

国税や地方税が払えない場合でも、納税を延期(猶予)してもらう制度があります。

一番よくないのは、納税できない状況に目をつむって、そのまま放置してしまうことです。納付を待ってもらえる猶予(ゆうよ)の制度を、簡単に紹介します。

説明のポイント

  • 期限内に納付しないとペナルティが発生する
  • 1年以内の分割払いで先延ばしできる猶予制度がある
  • 督促(とくそく)を無視していると、財産の差押えを受けることも
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納税できないことを放置しない

最初に言っておきたいのは、「納税できない状況を放置しない」ということです。

納税できない状況が恥ずかしいと思い込むことや、資金繰りが苦しく精神的に追い込まれている意識から、税務署や地方自治体(都税事務所など)にも相談に行かず、結果として税金をどんどん滞納してしまう、という事例があります。

税金をきれいに納税できれば、それが理想です。しかし、資金繰りに余裕がない場合など、事情によって納税が苦しい状況は、現実として当然にあり得ることです。

何も対応せずに納税を放置するのは、最悪の選択肢です。国や自治体が用意している、納税を待ってもらえる制度を利用しましょう。

納税できないことのデメリット

期限までに納税できないことのデメリットを確認します。

1.遅延のペナルティ

期限が過ぎた時点から、「延滞税」「延滞金」(遅れた分の利息)が発生します。期限が過ぎて2ヶ月までは年2.8%の利率、2ヶ月後からは年9.1%の利率です。(年によって変動があります)

実際、年利9.1%という額は重い負担です。資金繰りが苦しいのに、さらにペナルティが上乗せされるので、状況を悪化させることになります。

参考延滞税の割合(国税庁)

2.財産の差押えの恐れ

納付をうながす督促状(とくそくじょう)を無視し続けると、財産の差し押さえをうけることがあります。これは脅しではなく現実にある話です。

督促を無視し続けると、まず財産調査が行われ、それでも納付する意思がない場合に差し押さえが行われます。差し押さえられた財産は、官公庁オークションなどで売却されます。

参考官公庁オークション(Yahoo!Japan)

3.納税証明書が発行されない

「税金の未納がない」という納税証明書を発行してもらえません。このため、借入などに影響が生じます。

納税できない場合、どのように対応すればよいか

納税できない状況の場合は、早めに税務署や、地方自治体の納税部門・都税事務所へ相談に行きましょう。

国や地方自治体では、納税できない状況の場合に、税金の納付を先延ばしにしてくれる制度があります。

(1)「換価の猶予」制度

「換価(かんか)の猶予」の制度は、2016年4月から新しくなり、次の2種類の制度に変わりました。

  • 税務署が職権で猶予を決める従来型の制度
  • 納税者の申請で猶予を求める新しい制度

猶予の申請により、財産への差し押さえにストップをかけて、税金の納付を先のばしにできます。「延滞税」の負担も一部軽減されます。

納税者が申請して猶予を受ける、新しい制度の条件は次のとおりです。

  1. 納税により、事業の継続や生活の維持を困難にする恐れがあると認められること
  2. 納税について、優先的に納付する意思があると認められること
  3. その他の税の滞納がないこと
  4. 納付期限から6ヶ月経過までに申請すること(※都税の場合は3ヶ月以内

申請にあたっては、申請書のほかに「財産収支状況書」を提出します。猶予申請額が100万円を超える場合は、「財産目録」の提出が必要なほか、担保の提供も必要です。

この申請が認められれば、猶予期間は1年の範囲の分割払いになります。それでも支払いが難しい場合は、さらにもう1年の延長を申請できます。

納付期限から6ヶ月を経過している場合は、従来型の職権による猶予制度を税務署に依頼することになります。

(2)「納税の猶予」制度

猶予制度にはもうひとつあります。次に該当する場合には、「納税の猶予(ゆうよ)」の制度によって、納税を待ってもらえます。

  1. 災害や盗難にあった
  2. 本人や家族が病気やけがをした
  3. 事業をやめたり、休んでいる
  4. 大赤字を出した(前年利益の半分を超える赤字)
  5. 修正申告で納税する額が増えた

この制度においても、納税を1年以内の分割払いにできるほか、ペナルティである延滞税が免除される場合もあります。

修正申告で納税する額が増えた場合(上記5)は、修正申告書の提出までに申請が必要です。

猶予の制度が二つに分かれているのは、これらの制度を定めている法律が、それぞれ異なるためです。

申請のポイント

重要なのは、これらの制度を使うには、納税者が自ら申請するということです。

誰かが親切に申請をしてくれることはありません。納税できないことがわかった時点で、早めに対応しましょう。

【参考】税務署の職員からひどい対応を受けた場合

補足として、念のための知識も書いておきます。

滞納の相談に行って、もし税務署の職員からひどい対応をうけた場合にはどうすればいいでしょうか。税務署には苦情を受け付ける窓口として、「納税者支援調整官」という職員が存在します。

参考納税者支援調整官を設置している国税局・税務署のご案内(国税庁)

ただし、調整官は国税内部の職員であり、いわば身内です。改善を約束されても、それが本当に実現されるかは、なんともいえない部分もあります。

まとめ

資金繰りが苦しくなって、税金を一時的に滞納しても、会社がすぐに倒産することはありません。支払先の順序を間違えると、会社が倒産する恐れも高まります。

勇気を持って、税務署や役所(都税事務所)に行き、まず納税を待ってもらうように相談しましょう。このことは、恥ずかしいことではありません。

なお、「換価の猶予」と「納税の猶予」の制度をまとめた手引きが、国税庁から公表されています。以下のリンクを参照してください。

参考猶予の申請の手引(国税庁)

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