源泉控除対象配偶者とは? 配偶者控除の改正による給与計算・年末調整のポイント

国税庁は2017年6月、「配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しについて」という新規情報を掲載しました。この改正の影響による給与計算・年末調整の変化を考察します。

説明のポイント

  • 高所得層は適用不可になるため、給与所得者の年収の見積もりも必要に
  • 配偶者特別控除の枠が拡大
  • 扶養親族の人数が変化して、手取りが変わる場合も
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配偶者控除・配偶者特別控除の改正で生じる影響は?

平成29年度税制改正により、「配偶者控除」「配偶者特別控除」の改正が行われました。改正のポイントは、次のとおりです。

  • 【配偶者特別控除の枠が拡大】
    配偶者年収が103~150万円でも、配偶者控除と同様の「配偶者特別控除で所得控除38万円」の適用ができます(※給与所得者の年収1,120万円以下が条件)
  • 【高所得層は適用不可に】
    配偶者控除・配偶者特別控除に所得の上限が新規設定されました(年収1,120万円以下であれば、これまでどおり満額の適用)

この改正は、一般的なサラリーマン層の共働き世帯に配慮した内容になっています。

これまでの「103万円」ではなく、配偶者の収入が150万円までは、同額の所得控除38万円になるからです。つまり税金の意味での「103万円の壁」は、150万円に移動したことを意味します。

なお、150万円を超えたとしても、配偶者特別控除の適用額は徐々に減少するので、控除額がすぐに0円になるわけではありません。(配偶者の収入が増える分だけ、給与所得者の配偶者特別控除の控除額が減少するしくみです)

「103万円の壁」で留意すべきなのは、企業の配偶者手当において、配偶者の年収が103万円以下(配偶者控除の適用)が条件とされている場合も多い点です。こうした意味で「103万円の壁」は残っているといえます。

この改正は、配偶者が年収を抑えている現状を打開するためとされています。

共働き層が優遇された代わりに、その財源分として、高所得層には配偶者控除を適用しないことになりました。高所得層であるかどうかの判定のために、今後は給与所得者自身の所得も加味して適用額を判定する必要があります。(ややこしい!)

具体的な控除額の一覧表は次のとおりです。(※収入と所得を誤読しないように注意してください)

企業内で知っておくべきこととは?

このブログは、中小企業の実務に関わる人をターゲットに書いています。このため、現時点でわかっていることを中心に、この税制改正による実務への影響を考察します。

1.扶養親族等の数が変化して、手取りが変わる場合も

今回の改正では、「給与所得者の所得」と「配偶者の所得」の2つの要素によって、控除のしくみが次のように変化します。

  • 「配偶者控除」と「配偶者特別控除」のどちらを適用するか(配偶者の所得による。いままでどおり)
  • 所得控除額が変わる(給与所得者と配偶者の所得による【New!】)

この影響で、給与計算のおける源泉徴収では、扶養親族等の人数に変化が生じます。

下の画像は、給与計算において、配偶者を扶養親族等の人数にカウントする場合の条件です。パッと見て、意味不明な感じがしませんか?

これまで配偶者控除の対象だった範囲においても、なぜか、「扶養親族等の数が0人扱い」になっている部分があります。

これは、実際の控除額と重ねてみると、理解が早いです。

下図のとおり、控除額が「38万」に該当する部分だけが、「扶養親族等の数が1人」になるわけです。これは配偶者特別控除の適用があったとしても同様です。改正後は、配偶者特別控除でも、「扶養親族の数は1人」になる場合があります。

控除額が38万を下回る場合は、「扶養親族等の数は0人」になります。

例外ルールとして、配偶者の所得が38万円以下であり、障害者控除の適用がある場合は、扶養親族等の数に1人加算します。

要注意なのは、年収1,120万円超の役員・従業員です。扶養親族等の人数が変化することで、平成30年から、給与の手取り額が変わることも想定されます。

 

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2.用語が変化している

用語が変化していることにも要注意です。以下の図は、給与所得者と配偶者の所得に応じた「配偶者の対象となる範囲の用語」です。

重要なポイントとして、これまで扶養の配偶者を意味してきた「控除対象配偶者」は違ったものになっています。控除対象配偶者であっても、「扶養親族等の数の1人」になるとは限りません。

扶養親族等の数と、用語の範囲を重ねてみました。これをみると、扶養親族等の数が1人になるのは、「源泉控除対象配偶者」の範囲となっています。

よって、改正後は「扶養親族等の数が1人」でカウントする範囲は、「源泉控除対象配偶者」になります。

一方、「控除対象配偶者」はこれまで同様に、配偶者控除の対象となる範囲を意味しますが、必ずしも「扶養親族等の数の1人」にカウントするわけではない、ということに留意しましょう。

頭が痛くなるような話ですが、要はこれまで「配偶者控除の対象となる控除対象配偶者=扶養親族等の数を1人でカウント」という用語の意味だったのが、

  • 配偶者控除の対象である「控除対象配偶者」(ただし、控除額は38万円とは限らない)
  • 扶養親族等の数を1人でカウントとする「源泉控除対象配偶者」(控除額38万円で、配偶者控除または配偶者特別控除の適用)

の2つに、意味が分離してしまったということです。

3.給与所得者自身の所得の見積もりが必要になる

前述のとおり、扶養親族等の人数を計算するには、給与所得者と配偶者の両方の所得の見積もりが必要になります。

これまでは、配偶者の所得の見積もりだけでよかったのが、今後は給与所得者の見積もりまで必要になるわけです。

なお、国税庁の案内では、自分の所得の見積額が900万円以下(年収1,120万円以下)になる場合に限り、扶養控除等申告書における源泉控除対象配偶者の欄に、配偶者を記載するとされています。

この新しい記入方法は、平成29年末の年末調整において、平成30年分の用紙を回収するときに変わります。(つまり、この記事執筆時の次回の年末調整から変化)

予想年収1,100万円近辺の役員・従業員については、扶養親族等の数しだいで、手取りや年末調整に影響がでます。

このため、来年の予想年収をどう見積もるのか、というルール作りが必要になるでしょう。(年収の見積もりについては、指定されている方法はありません)

4.【平成30年の年末調整】配偶者特別控除の用紙が、保険料控除と別々に分かれる

この制度改正により変更となる年分は、「平成30年分」からです。このため、平成30年末の年末調整においても影響が生じます。

結論からいえば、配偶者特別控除の適用を受ける場合には、保険料控除申告書とは別の申告書に記入することになりました。

現行では、配偶者特別控除の適用を受ける場合には、「保険料控除申告書」と同じ用紙になっていましたが、これが2つの用紙に分かれることになります。(下図は現行・平成28年分の申告書)

新しい様式での「配偶者特別控除申告書」を提出するのは、平成30年12月の年末調整ということになりますので、この記事執筆の時点における次回の年末調整(平成29年12月)では影響はありません。

5.年末調整後に年収の見込みにズレが生じた場合は?

年末調整後に、従業員から次のような相談があった場合はどうすればよいでしょうか?

妻のパート収入が年末の残業で当初の見積もりを超えてしまったのだけれど、配偶者特別控除に影響はあるの?

この場合、1月31日までであれば、年末調整のやり直しが可能です。

基本的に12月の最後の給与で渡してしまうことの多い源泉徴収票ですが、従業員から源泉徴収票を回収して、年末調整の再計算を実施しましょう。

年末調整の再計算を実施せず、従業員自身で確定申告も行っていない場合は、計算の誤りについて税務署からのお尋ねが会社に届くことも予想されます。配偶者特別控除の適用者数が増えることにより、お尋ねの件数の増加が予想されます。

まとめ

平成29年度税制改正にともなう「配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し」について、情報を整理しました。

最新情報は、国税庁のホームページも参照してください。

参考配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しについて(国税庁)