労働生産性を「従業員1人あたりの付加価値額」から求めてみよう

よく耳にする「生産性」というキーワード。自社の「生産性」を算出する方法と、公表されている平均値との比較についてお伝えします。

説明のポイント

  • 労働生産性の求めかた
  • 産業ごとの「従業員1人あたりの付加価値額」
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生産性とは何か?

「日本の企業は生産性が低い」――。昨今、ひんぱんに耳にするキーワードです。その「生産性」とは、いったい何を指すことばなのでしょうか。

たんに効率の良し悪しを「生産性」という言葉で表現する場合もありますが、ここでいう「生産性」は、正確には「労働生産性」と呼びます。

すなわち、労働によって生み出される価値を指し示すことばを意味します。

労働生産性の求めかた

では、その労働生産性はどのように求めればよいのでしょうか?

経済産業省が示す「中小サービス事業者のための生産性向上のためのガイドライン」に、「労働生産性」の求めかたとして次の記載があります。

「営業利益+人件費+減価償却費」を付加価値額とし、それを従業員数(または労働時間数)で割ると、1人あたりの付加価値額が求められます。

この数字は、手もとの決算書からすぐに求めることができます。経営指標は数多くありますが、労働生産性を「1人あたりの付加価値額」という点で測ってみるのもよいでしょう。

この指標は、なかなか興味深いです。なぜなら、利益をたくさん出していても、そのためにやたら従業員(労働時間)を増やしていると、かえって1人あたりの付加価値額は低くなる場合もあるからです。

自社の「強さ」がはっきり現れるのが、この指標の特徴といえるでしょう。

自社の労働生産性はどうなのか?

自社の労働生産性(従業員1人あたりの付加価値額)がわかったとして、その労働生産性っていいのだろうか?という点も気になるところでしょう。

中小企業庁の「中小企業実態調査」では、業種ごとの付加価値額が公表されています。これを、従業員数で割ることで、1人あたりの付加価値額をグラフにしてみました。

全産業合計における1人あたり付加価値額は、519万円とされています。

↓クリックで拡大できます

出典「中小企業実態基本調査」平成29年速報(平成28年度決算実績)(中小企業庁)

このグラフの形式は、もともと「中小サービス事業者のための生産性向上のためのガイドライン」の巻末に掲載されているものですが、掲載されている年度が古いため、筆者が最新の数値で求め直したものです。

なお、中小企業実態調査における付加価値額は、さきほどお伝えしたものよりも、もう少し定義が細かくなっています。

付加価値額は、「労務費+売上原価の減価償却費+人件費+地代家賃+販売費及び一般管理費の減価償却費+従業員教育費+租税公課+支払利息・割引料+経常利益」とされています。

先ほどお伝えした算式と大きく異なるのは、「地代家賃」を含める点です。グラフと比較する上では、この算式にあわせたほうがよいでしょう。

労働生産性を向上させるにはどうすればいいのか?

もう一度、労働生産性(1人あたりの付加価値額)の算式を見てみましょう。

この算式をみると、1人あたりの付加価値額を高めるためには、次の対応が必要です。

  • 分母(従業員数または労働時間数)を少なくする
  • 分子(利益)を増やす

こうしてみると、「生産性が低い」という批判は、利益を生み出すちからが弱いか、事業が不効率であるかの、いずれかを指すことがわかります。

例えば、最近話題となっている「働き方改革」は、分母側への働きかけ(=効率化による労働時間の削減)と考えることができるでしょう。

「働き方改革」は事業の効率化や営業利益の増加につながりますが、分母の労働時間数が削減されると同時に、分子側の「人件費」の削減にもつながるため、指標としての労働生産性には大きく影響しないという指摘もあります。

中小企業における付加価値額向上の具体的な取り組みについては、以前に「中小サービス事業者のための生産性向上のためのガイドライン」の内容を紹介した記事もご参照ください。

経済産業省の策定したガイドラインや、日本政策金融公庫のレポートから、中小企業における労働生産...

まとめ

労働生産性(1人あたりの付加価値額)の求めかたと、産業ごとの平均値のグラフをお伝えしました。

グラフを見れば、自社の立ち位置がわかるでしょう。大企業に比べ、中小企業は労働生産性が劣るとされています。労働生産性を高めるための方策を考えていくことも重要でしょう。

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