「年末調整手続の電子化」対応アドバイス【3】どの環境で作業するか

前々回前回に引き続き、「年末調整手続の電子化」について、対応を事前に検討するためのアドバイス集を提供します。

説明のポイント

  • 年末調整ソフトの利用環境について事前に検討しておく
  • 共用パソコンの利用有無、社内のセキュリティへの配慮、スマートフォン利用の場合の印刷方法など
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【3】個人のPC・スマホか、共用PCにするか?

年末調整ソフトを利用してもらう場合は、どの環境で利用してもらうかを想定するとよいでしょう。

年末調整ソフトは国税庁から無料で提供されるため、もし従業員に対して何も周知しない場合は、従業員が自由に入手して利用します。

こうした放任の対応ではなく、会社がソフトを利用する環境について、事前の検討を加えておいた方がスムーズかもしれません。

共用パソコンの利用でもよい

デスクワークの従業員が少ない場合や、少人数の会社であれば、社内に共用パソコンを設けて年末調整ソフトをインストールし、利用してもらうことも検討してもよいかもしれません。

給与担当者からのサポートもしやすいですし、プリンタを接続しておけば、書面提出も楽です。入力方法のかんたんなマニュアルを置いておけば、さらにスムーズといえます。

ソフトの操作については、国税庁がサポートダイヤルを用意する予定とされているため、すべての質問を担当者自身で解決する必要はないでしょう。

共有パソコンを利用する点について、国税庁FAQ問5-9を参照してみましょう。

パソコン版の年調ソフトは複数人での使用が可能です。複数人で年調ソフトを共用する場合は、起動の際に複数人で利用することを選択し、利用者情報を登録の上、パスワードを設定するようになっています。

次回以降、その従業員の控除申告書データはそのパスワードがないと開けないようになっていますので、複数人で一台のパソコンを共用していたとしても、現に年末調整申告書を作成している最中の場合等を除いては、他人にご自身の年末調整申告書の内容を見られてしまうことはありません。

年末調整ソフトの利用画面を見ると、FAQのとおり、利用時にあたってIDごとに区分されています。

パスワードがわからないと、自分のIDの利用画面を開くことができません。セキュリティは保たれているといえます。

 

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社内のセキュリティはどうか

従業員が各自のパソコンを利用して、それぞれ年末調整ソフトをインストールする場合は、社内におけるセキュリティとの兼ね合いに注意します。

年末調整ソフトFAQの7月改訂版により、インストールにおいて権限が必要という仕様に変更されています。(FAQ問5-7)

国税庁からは、セキュリティへの対処チャートがパンフレットとして用意されています。「勤務先向け3 ~導入時セキュリティ編~」のパンフレットを参照し、自社に当てはまるケースを参照しておくべきでしょう。

社内におけるインターネットへのアクセスや、外部ソフトのインストールを厳しくしている場合は、なにも周知しないままでいると、問い合わせが殺到する可能性があります。

また、USBメモリの持ち込みを厳しくしている場合も、従業員が社外にて年末調整ソフトで作成した場合への対応も想定したほうがよいでしょう。

スマホ利用はどうなのか?

スマートフォン用アプリのプロトタイプ版は公開されておらず、この記事の執筆時点(2020年9月上旬)で事前のテストはできません。

あくまで想像ですが、パソコン版とほぼ同じ動作と思われます。以下の記述もパソコン版と同じ動作であることを前提とします。

年末調整ソフトはiPhone、Androidのアプリでも提供されることから、スマートフォンによる作成を従業員にうながすことも可能です。

社内に従業員のパソコンがない場合でも、スマートフォンであればほとんどの従業員が自分で所有しているでしょうから、一律導入のハードルは低いといえます。

スマートフォン利用で気になるのは、書面提出の場合における印刷の方法です。

想定されるのは、従業員がスマホ内部のPDFを社内パソコンにメール添付で送信し、印刷するというパターンでしょう。

もし給与担当者にPDFを直接送信すると、書面への押印が手順として不足しがちです。代行で印刷してもよいでしょうが、押印の回収に注意します。

書面印刷した場合、扶養控除等申告書などの年末調整書類に押印欄が見当たりませんが、現行の税法上の要件をみるに押印は必要と考えられます。

従業員が社外で印刷する場合は、従業員の自宅パソコンか、コンビニ印刷も想定されます。

個人が確定申告をする場合に利用する「確定申告書等作成コーナー」ではスマホ版が近年提供されています。この場合における確定申告書については、コンビニでの印刷なども想定されていました。

どのようにスマホからPDFを印刷するかについては、「スマホ申告の手引き③」送信票兼送付書等の印刷」の手順も参考になるでしょう。

2020年10月以降では、国税庁公式の操作マニュアルもリリースされるのでは……と考えられます。(筆者の予測です)

なお、iPhoneにおけるマイナンバーカードでの電子署名には対応していない、と思わしき記述がFAQに見られます。(FAQ問5-12参照)

ソフトの利用パターンとして「スマホ利用→電子署名→データ提出」というパターンは、初年度である2020年ではまだ少ないでしょうが、要注意です。

まとめ

ここまで、年末調整ソフトの利用環境についての事前対応を整理してきました。

利用環境でチェックしておくべき点としては、

  • 共用パソコンを設けるか
  • 社内のセキュリティへの配慮
  • スマートフォン利用の場合の印刷方法

などが課題として浮かび上がります。