確定申告書の書面提出でも、源泉徴収票の添付が不要に

2018年12月14日に与党から発表された「平成31年度税制改正大綱」より、気になるトピックスを採り上げます。

基本的な内容は新聞報道等で一覧できますので、このブログでは、そのような報道では紹介されない注目点を紹介します。

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確定申告書の書面提出でも、源泉徴収票の添付が不要に

今回は、確定申告書を書面提出する場合でも、源泉徴収票の添付が不要になる、という改正を紹介します。平成31年(2019年)4月1日以後に提出する確定申告書等について適用されます。

大綱の記述

税制改正大綱の記述を引用します。

次に掲げる書類については、確定申告書等に添付し、又は確定申告書等の提出の際提示することを要しないこととするほか、これに伴う所要の措置を講ずる。

①給与所得、退職所得及び公的年金等の源泉徴収票
⑤特定口座年間取引報告書

(注)上記の改正は、平成31年4月1日以後に提出する確定申告書等について適用する

(「平成31年度税制改正大綱」P36、①⑤は抜粋したもの)

これまでの経緯

電子申告(e-Tax)を利用して確定申告書をデータ送信している場合には、源泉徴収票や証券取引の特定口座年間取引報告書の提出は省略されています。

これは、せっかく電子申告で提出したのだから、その後に紙の書類をわざわざ郵送する手間を考慮したものといえます。

その一方で、確定申告書を書面提出する場合は、下のような台紙に源泉徴収票を貼り付けて提出しています。これは昔からの方法といえます。

改正の影響

今回の改正により、確定申告書の書面提出時において添付していた源泉徴収票や年間取引報告書は、自分で保管しておけばよく、確定申告書への添付は不要になります。

この制度は「平成31年4月1日以後に提出する確定申告書等について適用する」とされていますので、この記事を書いた時点(2018年12月)から見るに、次回の確定申告(2018年分=2019年3月提出期限)は対象外となります。

解説

この改正の目的は、源泉徴収票や特定口座年間取引報告書について、書面の交付と同様に、電子交付も「通常の方法」として位置づけるためのものと考えられます。

なぜかというと、大企業を中心に給与明細や源泉徴収票の電子交付が進んでいるものの、電子交付された源泉徴収票をそのまま印刷しても、書面提出の確定申告書には添付できないという制限があったからです。

確定申告書は書面での提出割合がいまだに多いにもかかわらず、大企業のサラリーマンを中心に電子交付された源泉徴収票を印刷したものが添付されていると予想され、この制限は事実上うやむやになっている実態を当ブログでも指摘しています。

会社からPDFなどで電子交付された源泉徴収票は、プリントアウトしても、確定申告に使うことはで...

また、証券会社で電子交付される年間取引報告書についても同様の問題があります。やはり電子交付されたものはだめで、書面交付されたものだけが添付できる問題がありました。この問題点も、当ブログでとりあげています。

なお、平成29年度税制改正において、電子交付された「電磁的記録印刷書面」を添付できるという手当てが今後予定されていましたが、さらに一歩進んで添付不要とされたことになります。

証券会社から電子交付されている「特定口座年間取引報告書」について、確定申告で使えるのは平成31年分か...

今回の改正により、これらの制度的な不都合が解消されることにつながり、給与明細や源泉徴収票などの電子交付も促進されるものと考えます。

企業における事務負担や、確定申告の事務負担の軽減につながるでしょう。

改正により、電子署名のない電子交付と書面交付は、差し支えのない分野において、事実上同じ扱いになったといえます。これと比較するに、生命保険料控除、地震保険料控除、寄付金控除のQRコード付証明書制度では電子署名のあるデータが求められるため、全面的な許容ではないことに留意が必要でしょう。

補足

上記のように考える理由ですが、政府税調に提出された財務省資料(2018年10月)において、その点が告知されていたからです。

その財務省資料(1ページ目)を見ると、「源泉徴収票の電子交付を促進しつつ」と簡単に触れた文言があるだけでしたが、それがこの改正を指していると考えられます。

まとめ

「平成31年度税制改正大綱」から、当ブログ独自の注目点を紹介しました。

医療費控除の領収書添付についても、明細書の提出を要件に平成29年分から提出不要とされたことは記憶にあたらしいところです。

これに続いて、源泉徴収票等も平成31年(2019年)4月以降、添付不要となります。確定申告の簡略化を促進する動きと捉えることができるでしょう。

そもそも、源泉徴収票にかかわる所得や株式等に関わる所得は、マイナンバーでの紐づけがなされているもので、たとえ虚偽申告や書類の改ざんがあったとしても、税務当局においてその捕捉は容易といえます。

また、所得税の確定申告におけるe-Taxの利用率も伸び悩んでおり、書面提出をする人はまだまだ多くいます。

今回の改正は、実務上のコストを省き、制度上の不都合を解消する思い切った取り組みとして評価されてよいでしょう。

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