当ブログはクラウド会計に関心をもっており、その連携対象であるネットバンキングの利用状況についても注目しています。小規模事業者を対象とした調査で、ネットバンキングの利用率が記載されていたものがあることに気づいたので、ご紹介します。
説明のポイント
- 小規模事業者のネットバンキング利用率がわかる資料があった
- 利用率は27.4%だった
- 中小企業庁の委託調査のため、信頼度は高い
小規模事業者のネットバンキング利用率は27.4%
さきに結論からいいますと、小規模事業者におけるネットバンキングの利用率は27.4%という調査結果でした。
その割合としては「30%弱」という感じで、ネットバンキングを利用していない小規模事業者の方が多いことがわかります。
この調査結果が載っていたのは、「平成29年度 小規模事業者等の事業活動に関する調査に係る委託事業報告書」(2018年)です。調査委託者は中小企業庁で、委託を受けて調査したのは三菱UFJリサーチ&コンサルティングです。
調査実施時期は2017年12月~2018年1月であり、比較的最近のことです。この調査結果は、2018年度版「小規模企業白書」の基礎資料となっており、その重要性は高いといえます。
なお、小規模事業者とは、中小企業基本法において「製造業その他で20人以下、商業(卸・小売)・サービス業で5人以下」の事業者と定義されています。
この調査対象となっていた小規模事業者の内訳ですが、法人と個人事業主がほぼ半分ずつとなっています。
利用率の年代別内訳
年代別の傾向は、2018年度版「小規模企業白書」においてグラフ化した結果が見られます。
50代まではほとんど同じ利用率(30%台)ですが、60代以上になると極端に利用率が下落します。これはネットバンキングだけが特別というわけでもなく、ほかのITツールでも同じ傾向が見られます。
30代~40代は、もっと利用率が高いように想像していましたが、筆者の想像とは異なった結果で意外でした。
引用:2018年度版「小規模企業白書」第2章 小規模事業者のIT利活用による労働生産性の向上
以前の記事で、法人の利用率を50%程度と推測していた
ちなみに当ブログでは、以前の記事で法人におけるネットバンキングの利用率を調べた結果を載せたことがあります。
その記事では、振込にネットバンキングを用いているという調査結果(2016年)から、おおよそ50%程度ではないかと述べました。調査対象となっているのは、中小企業です。
これと比べると、今回紹介した小規模事業者を対象とした結果では27.4%という結果であり、規模が小さくなると、ネットバンキングの利用率も低めになっているらしい……という傾向がうかがえます。
また、これとは別の調査ですが、個人向けを対象とした日本銀行による調査で、ネットバンキング利用率を尋ねたものがあります。
その調査は日本銀行「生活意識に関するアンケート調査」(第74回)(PDFのP.24)で、利用率は26.3%(2018年)という結果でした。
この結果を見る限り、「個人と小規模事業者の垣根はほとんどない」といえそうです。
クラウド会計利用率は、ネットバンキング利用者の3分の1程度
「小規模事業者の利用率は27.4%」という調査結果ですが、これと照らし合わせると興味深い利用率があります。それは、同じ調査に載っていたクラウド会計の利用率です。
この調査におけるクラウド会計の利用率は、9.8%でした。
引用:「平成29年度 小規模事業者等の事業活動に関する調査に係る委託事業報告書」(2018年)
ということは、ネットバンキングの利用者とクラウド会計の比率は、3分の1程度ということになります。
ネットバンキングを利用せずに、クラウド会計だけを利用している可能性もありますが、メリットにはとぼしいので、ケースとしては少ないと考えられます。
ネットバンキングとクラウド会計の利用率を見ると、小規模企業におけるクラウド会計の伸びしろは、まだあるといえそうです。
気になることとしては、そもそものネットバンキングの利用率が高まらないと、クラウド会計の利用者も増えづらい可能性があります。
つまり、ネットバンキングの利用率がボトルネックになっている可能性、ということです。
クラウド会計をおすすめしている関係者(=施策を担当する政府、会計ソフト会社、税理士)は、ネットバンキングの利用者を増やすことにも知恵をしぼらないと、その「裾野」も広がっていかないことに留意すべきでしょう。
まとめ
2018年度版「小規模企業白書」の基礎資料となった調査結果から、小規模事業者を対象としたネットバンキングの利用率の結果がありましたので、ご紹介しました。
この調査は以前にも目を通していましたが、再読してようやく気づいた内容だったので、ブログでお伝えしました。
なお、2007年~2012年の調査では、これよりも利用率が高めに出ている結果も見られます。こちらもあわせてご参照ください。