「インボイス非登録=免税事業者」とは限らない。インボイス登録はあくまで任意

前回に続いて、免税事業者向けの解説です。

インボイスを発行できない事業者が、すべて「免税事業者」と思っているとしたら、それは誤解です。課税事業者であっても、インボイスの登録をしていない場合もあります。

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想定

私は免税事業者です。2023年10月以後もインボイスの登録はしないつもりですが、インボイスに非登録であることを取引相手に伝えたところ、「なるほど、免税事業者なんですね」と言われました。

私は以前に、売上が好調だった時期には課税事業者だったので、消費税の納税をしたこともあります。

ところで疑問なのですが、「インボイスに登録していないこと」によって、私が「免税事業者」だと、相手にわかるものなのでしょうか?

検討

結論からいうと、インボイスに登録していないからといって、免税事業者とは断定できません。課税事業者であっても、インボイスに登録していない場合もあるからです。

インボイスに関する報道でも、「納税義務のある課税事業者の申請が8月末時点でおよそ95%に達したと公表した」(日本経済新聞、2023年9月11日)とあります。裏を返せば、5%程度はまだインボイス非登録の課税事業者がいるわけです。

インボイス制度は、①「課税事業者」で、②「登録した事業者」を公表する制度です。

登録ができるのは、課税事業者だけで、免税事業者は登録できません。しかし、課税事業者がインボイスの登録をするのは義務ではありません。

このことから、課税事業者であっても、登録を忘れていた事業者であったり、BtoC取引しかなく登録にメリットがない課税事業者の場合でも、インボイスに登録していない可能性があります。

「メリットがない課税事業者」というのは、インボイスの交付が求められない事業です。

インボイスは取引先である課税事業者から求められた場合に交付する義務があるもので、交付が求められていないならば、あえて交付する必要はありません。消費者向けの事業では、インボイスを求められる機会があるのかをよく考える必要があります。

いまは課税事業者であっても、売上が下がって1,000万円を下回ることで免税事業者になれるとしたら、免税事業者に戻ることを選ぶ可能性もあるでしょう。

インボイスの登録をしてしまうと、課税事業者が強制されてしまい、免税事業者にはなれません。

免税事業者でもインボイスの登録をしているが……

さきほどの説明で、インボイスの登録をできるのは課税事業者だけと書きました。しかし、インボイスの登録は免税事業者でもしている人がいるので、変に思うかもしれません。

この理由ですが、免税事業者だった場合にインボイスの登録をするときは、これにあわせて課税事業者を選択する届出書を提出する必要があります。

ただし、令和11年9月30日の属する課税期間までは、課税事業者を選択する届出書の提出は不要とされており、このことから、免税事業者が「自分はインボイス登録のためにわざわざ課税事業者を選んだ」という実感がとぼしくなっている可能性があります。

話を整理すると、インボイスの登録をした免税事業者は、「課税事業者になる」→「インボイスに登録した事業者になる」という段取りを経ています。

まとめ

話が長くなりましたが、「インボイスに登録していない」=「免税事業者」というのは誤解ということです。

数は少ないですが、インボイスに登録していない課税事業者もいます。インボイスに登録するかはあくまで任意です。

しかし、相手方がインボイスを欲しいと考えている場合は、自分がインボイスの登録するかをよく考える必要があるでしょう。

国税庁のQ&A問11「登録の任意性」もご参照ください。

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