温泉療養と医療費控除 【2】対象となる温泉の具体例

医療費控除が適用できる温泉療養について、適用できる温泉地を具体的に紹介します。温泉療養による医療費控除の適用件数は少ないので、具体例を見ることでイメージしやすくなるでしょう。

説明のポイント

  • 温泉療養での医療費控除が適用できる全国21箇所の「温泉利用型健康増進施設」から、参考例として2箇所を紹介
  • 「豊富温泉」(北海道)と「長湯温泉」(大分県)
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温泉療養と医療費控除

温泉療養に医療費控除が適用できるという話。その制度が存在するということは、税務にかかわっていれば知っていることでしょう。しかし、実際に実務として取り扱ったことのある経験者が少ないことも事実でしょう。

その知識を補うことを目的として、以前の記事で、温泉療養と医療費控除に関する根拠と法令等の取り扱いを整理しました。

温泉療養で医療費控除が受けられるという話は知られています。その控除を受けるまでの流れはどうな...

医療費控除が適用できる温泉施設「温泉利用型健康増進施設」は、全国21箇所(2017年10月現在)とされており、その数は限られています。

温泉療養と医療費控除の関係を調べる過程で知り得た「副産物」として、積極的に広報を行っている温泉地や、医療費控除が多く適用されている温泉地があることもわかりました。

こうした実例を知っておくことも医療費控除という税務の実務に役立つかもしれませんので、ブログで整理しておきます。

なお、検索でやってきた人に念のため説明しておくと、このブログの筆者は税理士であり、温泉ジャーナリストではありません。

北海道「豊富温泉」 全国最多の医療費控除適用数

最初に紹介するのは、北海道天塩郡豊富町(とよとみちょう)にある「豊富温泉(とよとみおんせん)」です。

黄色が豊富町。北側に隣接する自治体は稚内市(ピンク色)。地図はwikipediaから引用し、矢印追加。

なぜこの温泉地を最初に紹介するのかというと、この温泉地を利用して医療費控除を適用している人数が、全国で最多の181人とされているからです。(2017年8月からの1年間、日本健康開発財団発表)

情報の根拠は北海道新聞「湯治で税控除 豊富温泉が全国最多 健康増進施設認定で利用増」(2018年11月23日)ですが、現在その記事は有料会員のみ閲覧可能となっています。

豊富温泉は、2017年7月に「温泉利用型健康増進施設(連携型)」として認定を受けたとのことです。認定後に医療費控除の適用者数が、日本最多となっていることは注目に値する話でしょう。

以下、豊富温泉ホームページより、重要な情報を紹介しておきます。

豊富温泉は大正14年(1925年)開湯で、昭和初期に温泉地として利用されるようになったとのこと。

泉質は「含よう素-ナトリウム-塩化物温泉(弱アルカリ性高張性温泉)と含よう素-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉(弱アルカリ性高張性冷鉱泉)」の2種類で、乾癬やアトピーに効能がある温泉として評価されています。

豊富温泉で特徴的なのは、温泉旅館やホテルのほかに、滞在費を安く抑えたい人向けの宿泊施設も用意されていることです。

宿泊施設の紹介を見ると、近年オープンしたシェアハウスなどもいくつかあるようです。湯治客の増加による影響でしょうか。

ホームページも温泉の情報を中心によくまとまっており、利用者目線で見やすい印象を持ちました。

ホームページの医療費控除の案内によれば、医療費控除の対象となる「温泉利用型健康増進施設」のうち温泉施設は、同町の「ふれあいセンター」とのことです。

つまり、豊富温泉であってもどこでも医療費控除の対象になるわけではなく、対象となる温泉は限定されていることに留意が必要です。(連携型のため、運動施設は別途あり)

なお、医療費控除の適用を希望する場合は、まずコンシェルジュ・デスクへ相談が必要とのことです。

大分県「長湯温泉」 おんせん県が誇る炭酸泉

次に紹介するのは、大分県竹田市の「長湯温泉」(ながゆおんせん)です。

濃いピンク色が竹田市。地図はwikipediaから引用し、矢印追加。

大分県は「日本一のおんせん県」とアピールするほどで、別府温泉、由布院温泉は全国的な知名度を誇ります。

そのなかでも竹田市にある「長湯温泉」は炭酸泉で有名であり、その効能は日本屈指と評価されています。全国の温泉を評価したランキングでも、長湯温泉の名前を見かけることもあります。

温泉の効能ですが、炭酸泉に含まれる炭酸ガスで血液循環がよくなるため、心臓病、胃腸病、リウマチなどに効果があるほか、飲泉も推奨されており、飲泉場も整備されているとのことです。

長湯温泉では、2017年7月に温泉施設として長湯温泉療養文化館「御前湯」が「温泉利用型健康増進施設(連携型)」の認定を受けており、医療費控除の対象となっています。(竹田観光ツーリズム協会ホームページより)

厚生労働省の認定時期は2017年と新しく、さきほど紹介した豊富温泉と同時期です。連携する運動施設が別途設置されて連携型として認定を受けているのも同じです。

医療費控除の適用を希望するには、まず事前に竹田市保険健康課温泉利用相談室での相談が必要とのことです。

筆者も相談室に電話してみたところ、すぐにパンフレットを送ってもらえました。気軽に相談ができる雰囲気で好印象でした。

さきほどの豊富温泉でもそうでしたが、医療費控除の適用を意識している温泉地では、温泉コンシェルジュのような受付が存在していることもわかります。

2つの事例による分析

このブログで紹介した2箇所の温泉地は、比較的近年に厚生労働省からの認定を受けており、新しい動きの事例といえるでしょう。

ここで紹介した事例を見ると、湯治による観光整備と一体的になっており、広報も積極的に行われている様子がうかがえます。

また、医療費控除の対象であることも「湯治としての温泉地」のアピールポイントになっていることもうかがえます。全国の温泉地でもこうした新しい動きが今後あるかもしれません。

なお、豊富温泉が日本一の医療費控除適用者数となっているのは、医療費控除が目当てというよりも、もともと同温泉がアトピー治療で有名だったからという推測もできそうです。

負担が重い滞在費が比較的安く抑えられるよう、一体となって整備に力を入れている点も印象に残りました。

まとめ

温泉療養と医療費控除について調べているときに情報収集したもののうち、医療費控除が適用できる施設例として「豊富温泉」と「長湯温泉」を紹介しました。

このブログの閲覧者は関東近県の人が多いと予想しますが、その関東近県だと神奈川県藤沢市の「江の島アイランドスパ」で、医療費控除を適用できる情報がホームページで見られます。

なお、北海道新聞の報道によれば、豊富温泉の医療費控除適用者数は、日本最多で1年間で181人とのことでした。

もし医療費控除の適用者数を全施設21箇所・平均100人と仮定すれば、21×100=2,100人となります。医療費控除は186万人の適用(国税庁「申告所得税標本調査結果」)とされていることを考えれば、その割合は0.1%にすぎません。

温泉療養の医療費控除を実務で目にする機会がほとんどないのも、当然といえるでしょう。

この記事と直接かかわりはうすいですが、温泉療養と医療費控除の関係を調べるうえで、気になった表現があったのでそれを指摘する記事を書きました。

温泉療養で医療費控除が受けられるという話は知られています。筆者は、温泉療養と医療費控除がさら...

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