前回に続いて、今回も消費税のミス事例の話です。日税連保険サービスが提供する、2025年度版の税務賠償事故の事例集を読んだところ、2年連続で消費税の課税事業者選択届出書について適用開始期間の記載ミスの事例が載っていることに気づきました。
この点について触れてみます。
事例の抜粋
事故事例からの抜粋です。
2024年度事例(主契約事例5)
・令和3年8月設立(資本金は1,000万円以下)
・令和4年6月 太陽光設備取得
・令和4年9月 決算
→課税事業者選択届出書の適用開始課税期間の記載を「令和4年9月期」とすべきところを、その翌年度の「令和5年9月期」と記載してしまった。
2025年度事例(主契約事例4)
・令和2年分 太陽光設備取得
→課税事業者選択届出書の適用開始課税期間の記載を「令和2年分」とすべきところを、その翌年の「令和3年分」と記載してしまった。
事例の補足として
くしくも同じ太陽光発電設備の取得で、課税事業者選択届出書の適用開始課税期間の記載ミスが掲載されています。
2024年度の事例は、事例の内容だと少し不明な部分もあります。第1期(令和3年9月期?)についてはとくに触れられていませんが、第1期は設立のみで事業活動はなかったので、第2期(令和4年9月期)からの選択について第2期(令和4年9月期)での提出で、課税事業者の選択が可能だった、ということかもしれません。
2025年度の事例は、単純に記入ミスかと思います。なお、これは個人の事例と思われますが、開業準備行為についての言及はありませんでした。(開業準備行為によるミス事例は事例集2022年度主契約事例4を参照)
条文では
消費税法第9条を読んでみます。
4 第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除されることとなる事業者が、その基準期間における課税売上高(同項に規定する基準期間における課税売上高をいう。第十一条第四項及び第十二条第三項を除き、以下この章において同じ。)が千万円以下である課税期間につき、第一項本文の規定の適用を受けない旨を記載した届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、当該提出をした事業者が当該提出をした日の属する課税期間の翌課税期間(当該提出をした日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間である場合には、当該課税期間)以後の課税期間(その基準期間における課税売上高が千万円を超える課税期間を除く。)中に国内において行う課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、同項本文の規定は、適用しない。
太字にしたところを読むと、通常は翌課税期間から課税事業者の選択になりますが、「事業を開始した日の属する課税期間」の場合は、当該課税期間からの選択になります。
そして、消基通1-4-14では、
・・・当該課税事業者選択届出書を提出した日の属する課税期間が令第20条各号《事業を開始した日の属する課税期間等の範囲》に規定する課税期間に該当する場合であっても、当該課税期間の翌課税期間から課税事業者を選択することもできることに留意する。(平15課消1-37により改正)
(注) この場合、事業者は、当該課税事業者選択届出書において適用開始課税期間の初日の年月日を明確にしなければならない。
と書かれています。
つまり、事業開始年度における課税事業者選択届出書の提出は、提出年度から適用がむしろ通常であり、それとあわせて翌年度の選択もできる、とされています。
そして、翌年度の選択の場合では、記入する適用開始課税期間の初日の年月日を明確にするように通達の注に書かれています。
慣れが怖い……
実務上としては、簡易課税や課税事業者選択の届出書における記入は一般的に「翌課税期間」ということに慣れています。しかし、事業開始ではこのケースに当てはまらないこともあるので要注意です。
事例を読むと、実務上の慣れが災いして、当年度に課税事業者を選択すべき場合においても、うっかり翌年度を「適用開始課税期間」として書いてしまうのでしょう。
似た事例が2年連続で掲載されたことは、ミスが起こり得る危険性の高さを示しているものといえそうです。改めて注意したいところです。
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