今まさに「風前のともしび」であるPHSについて、PHS使用歴17年のユーザーが、その現状を語ります。別に知らなくても問題ない知識が満載です。
説明のポイント
- PHSの販売はほぼ終了。新品のPHSを入手するのは困難
- サービスは継続中で、電波もきちんとつながる(2020年7月にサービス終了予定)
- 香港に持ち込むと罰金刑と禁固刑の恐れ
PHSとは?
PHSとは、携帯電話サービスのひとつで、パーソナル・ハンディフォン・システムの略です。家庭内のコードレス電話を発展させた規格で、電波の届く範囲は狭いものの、コストが安いのが特徴です。
1995年に3つの携帯電話会社がサービスを開始しましたが、携帯電話との競争で利用者が徐々に減少し、現在はワイモバイル1社だけがサービスを提供しています。
PHSという名称よりも、佐々木希さんのCMでおなじみだった「ウィルコム」(WILLCOM)という会社名のほうが有名でしょう。
ウィルコムよりもっと以前は、DDIポケットという会社名でした。ウィルコムもいろいろ頑張りましたが、携帯電話との競争に勝てず経営破綻しました。その後ソフトバンクの傘下のもとでPHS事業は存続し、ワイモバイル(Y!mobile)という会社名になっています。
【重要】PHSサービスの終了予定について
PHSサービスが「2020年7月末」をもって終了することがワイモバイルから発表されました。
この記事を書いたのは2016年4月です。初出時の雰囲気を壊さぬよう、最新情報は一部の追記にとどめており、積極的な訂正はほどこしておりません。
PHSの今を語ろう
知らなくてもまったく損しない! PHSの今をお伝えします。
1.全国でどれぐらい使われているのか?
総務省の統計によれば、平成28年3月31日におけるPHSの加入契約数は、約399万契約です。
携帯電話の加入契約数の1億5648万契約と比べると、その差は歴然です。携帯電話と比較した割合は、2.4%です。
少数派を通り越して、もはや異端派のレベルに達しています。
参考:情報通信統計データベース(総務省)
2.新品のPHSはもうほとんど手に入らない
新品のPHSは、もうほとんど販売されていません。
ワイモバイルのサイトを見ると、「ケータイ」として新機種が販売されているように見えますが、この機種は「携帯電話」であって、「PHS」ではありません。
いま確認したところでは、PHSの「Heart」だけがオンラインストアで販売されていました。
これからPHSを使い始める場合は、まだ新品が在庫にあるお店を探すか、ヤフオクなどで中古のPHSを探すことになります。
しかし、中古のPHSは、中古専門店でも買取を積極的に受け付けていないので、流通量も少ないです。
中古のPHSを手に入れたら、ワイモバイルのショップに持ち込むと契約できます。契約事務手数料が3,000円(税抜)必要です。一部、契約できない機種もありますので、ワイモバイルのヘルプを確認しましょう。
参考:すでに持っているワイモバイルの電話機で新規契約できますか?(ワイモバイル-よくある質問)
なお、中古でPHSを入手すると、電池が古い場合もあります。交換用の電池パックは、オンラインストアで購入できます。
3.防災対策におすすめ
本日は9月1日、防災の日なので、PHSと防災について述べておきます。
2011年の東日本大震災では、PHSが災害に強いことが実証されました。携帯電話に通信規制が敷かれたのに比べて、PHSに規制はなかったとのことです。
混雑に強い仕様であることや、そもそも使用者数が少ないこともあって、「PHSだけが通じる」という状況だったようです。
参考:防災対策で携帯2台持ち 2台目はPHSがオススメなワケ(ASCII.jp、2013年3月7日)
参考:【PDF】震災時にもつながったPHSでBCPを強化 日々の業務にも活用し、通信コストを削減(ワイモバイル)
4.香港に持ち込むと禁固刑の恐怖
香港では、PHSの持ち込みが禁止されています。これは、PHSが発する電波の種類が、香港では規制の対象になっているためです。
もし持ち込んだ場合は、罰金刑および禁固刑が科されます。所持すること自体が禁止されていますので、電源を入れていなくても同様です。これは恐ろしい話ですね。
香港では、PHS機器の持込みが禁止されています。2016年5月10日からは、香港域内での所持や使用も禁止され、違反者は最大5万香港ドルの罰金と禁固2年の刑に処せられます。そのため、香港にてPHSを所持している方やPHSを所持している方で香港への渡航を検討している方は、十分注意してください。
参照:(PDF)香港でのPHS機器の所持禁止に関する注意喚起(在香港日本国総領事館、2016年4月28日)
5.070番号でも違和感がなくなった
090から始まる電話番号が枯渇したため、2013年からは、PHS用の070から始まる番号も携帯電話の番号として交付されています。
かつては、携帯の番号を「070・・・」と伝えると、めずらしい人扱いでしたが、そんな印象も過去の話になるのでしょう。
また、PHSと携帯電話のナンバーポータビリティ(MNP)にも対応しました。MNPに対応した直後は、PHSから携帯電話に契約変更した方も多かったはずです。
6.2台目以降の契約は、基本料無料
ワイモバイルで「家族割引サービス」を利用すると、2台目にPHSなどのガラケー(フィーチャーフォン)を利用すれば、2台目以降の基本利用料は無料です。
また、PHSどうしの通話も無料ですので、「携帯電話はほとんど使っていないが、持っていないのも困る」という家族におすすめです。
参考:家族割引サービス(ワイモバイル)
7.電磁波が少ない!
PHSのアピールポイントのひとつが、「電磁波が少ない!」ということでした。もっとも、携帯電話の電磁波の影響については、昨今はほとんど聞かなくなりました。
電磁波に配慮すべき医療機関や福祉機関では、PHSはまだまだ現役で用いられているとのことです。
参考:PHSは低電磁波(ワイモバイル)
8.サービスが終了する可能性は?
2020年7月末をもって、PHSサービスの提供を終了することが発表されました。参考:PHS向け料金プランの終了について(2018年4月)
医療機関などで用いられていることもあって、PHSのサービスが終了する予定は、まだ当分先という話も耳にします。
しかし、以前にPHSの基地局を削減する情報もありましたので、今後どうなるかはわかりません。
参考:ウィルコム、PHS基地局数を3割削減。2014年夏までに11~12万局に(WILLCOM NEWS跡地、2011年7月7日)
9.電波って通じるの?
よくある疑問が、「電波って通じるの?」ということでしょう。
その答えは、「環境による」としかお答えできません。PHSは、携帯電話とは電波の性質が違うため、アンテナや遮蔽物などの環境による影響が大きいようです。
私が首都圏で生活している限り、これまで不便を感じたことはありません。先日、長野県の山間部に出かけたときでも、PHSで通話できました。
10.海外からのSMSが受信できない
PHSユーザーとしてつらいのは、海外のSMSが受信できないことです。SMS対応機種であれば国内でのSMSはやりとりできますが、海外とはできません。
これで困るのが、SMSによる認証です。認証コードが送られてくるのは、そのほとんどが海外からです。例えば、LINEやTwitterのSMS認証、Googleアカウントの二段階認証ができません。
SMSの代替手段として、音声通話で認証コードを通知してくれるところもありますが、それができないサービスも多いです。
ワイモバイルのヘルプに国際メールの項目がありますが、携帯電話やスマートフォンのみで、PHSは対応機種になっていません。
参考:国際メール(MMS・SMS)(ワイモバイル)
11.まだ海外で使えるの?
PHSの「国際ローミングサービス」は、2013年3月で終了しています(参考:ケータイWatchの記事)。
「国際ローミングサービス」とは、自分のPHS・携帯電話を海外に持ち込んで、そのまま使えるサービスです。終了時までは、タイや台湾でPHSを利用できるサービスとされていました。
ちなみに台湾におけるPHSサービスは、提供会社の破綻により、2015年で終了しているようです。(参考:wikipediaの「大衆電信」)
誤解のないように述べておくと、PHS以外のワイモバイルの携帯電話では、「国際ローミングサービス」は使えます。念のため。
まとめ
PHSユーザーしか知らない、いまどきのPHSの基礎知識をお伝えしました。
「香港に持ち込み禁止」という話は、PHSユーザーでも知らない人が結構いそうで、ちょっと気になっています。ワイモバイルから通知が来たような記憶もありません。
私はPHS歴17年で、初めてPHSを買ったのが1999年です。下の画像は、ワイモバイルの契約内容表示画面のキャプチャーです。
契約期間は15年5ヶ月になっていますが、使用開始後に約2年の時点で一度契約変更をしたので、通算では17年です。
これまで長くPHSユーザーだった人たちも、ウィルコムの経営破綻や、スマートフォンの普及で、PHSから離れていきました。私も現在は、スマートフォンとPHSの2台持ちです。
PHSのサービスがどうなるのか、古参ユーザーとして今後も見守っていきます。
追記
2017年9月末において、加入契約者数が300万割れになったことがわかりましたので、記事にしました。