年末調整の完全ペーパーレス化? 紙の束にまみれた日々の夜明けは近いのか

年末調整で回収する所得控除・税額控除の資料を、ペーパーレスで対応できることが検討されているようです。税務に関わる人にとって、興味深いニュースですので紹介します。

説明のポイント

  • 年末調整で、従業員から受け取っている控除用の書類・ハガキは、今後データに置き換わるかもしれない
  • 政府の規制改革推進会議で検討課題とされている
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「ペーパーレス年末調整」の実態は「完全ペーパーレス」じゃない

当ブログでは、以前にペーパーレスで年末調整を実現できる機能を紹介しました。

<当記事の改訂について> 当記事の初出時、「扶養控除等申告書」は申告書であり、国税関係書類に該当せ...
MFクラウド給与を利用する会社に向けた、素朴なギモンの解決法です。今回は、「扶養控除等申告書をネット...

その内容とは、これまで紙で出力していた扶養控除等申告書を、印刷不要にする制度です。この制度の利用には、事前に税務署から承認を得る必要があります。

しかし、その実を言うと、ペーパーレスで年末調整といっても、「完全にペーパーレス」になっているわけではありません。なぜなら、保険や共済の所得控除、住宅ローン控除の適用を受ける従業員は、その控除の証明書を「紙で」会社に提出します。

このため、各種申告書の作成をペーパーレスにできても、その申告書に添付する資料の提出から保管までは、ペーパーレスにできないわけです。

この部分が、「完全にペーパーレスではない」という主張の意味です。

本当の完全ペーパーレスが実現するかもしれない

ところがつい先日、興味深いニュースがありました。

政府の規制改革推進の検討課題の一つとして、社内の従業員が提出する控除の書類を、ペーパーレスで対応できるようにする点が挙げられていました。

参考年末調整関係書類の提出の電子化検討へ(tabisland、2017年6月2日)

指摘のあった箇所を引用しておきます。

ICTの一層の活用等により、被用者・雇用者を含めた社会全体のコストを削減する観点から、電磁的な方法による年末調整関係書類の提出を原則全て可能とすることについて、関係者の意見も踏まえて検討し、結論を得る。

その際、被用者が電磁的に交付された控除証明書を活用して簡便に控除申告書を作成し、雇用者に提供することができる仕組みの構築についても検討し、結論を得る。

方向性としては、従業員のマイナポータルに届いた控除証明書の情報を、事業者に連携できるしくみの整備が検討されているようです。

まだ具体的な制度は不明ですが、例えば、筆者が想像したのは次のようなしくみです。

マイナポータル内に会社用のアカウントを用意し、従業員から電子証明書のデータを転送を受けることで、紙(ハガキ)と同じ書類を提出したものみなす。

マイナポータルを活用した年末調整

このほかにも、マイナポータルから、保険料控除申告書をそのままプリントアウトできるしくみも望まれます。(手書きとチェックの作業時間の削減)

以前の税制改正で、似たような制度もできているが?

参考情報として、この件に似たような税制改正が実施済みであることにも触れておきます。

平成30年分から、保険料や寄付金の控除については、ハガキの送付ではなく、メールに添付された電子証明書を印刷した場合でも対応できるように法改正されています。

これは、平成28年度税制改正で実施されたものでした。この情報については、以前の記事で触れています。

年末調整に添付する控除証明書は、郵送された「はがき」以外にも、自分でプリントした電子証明書も可能にな...

ただし、この方法は受け取った電子証明書を従業員が印刷し、その書面(電磁的記録印刷書面)を印刷して、会社に提出するしくみです。

せっかくデータで受け取っても、結局印刷するのでは、ペーパーレスとはいえません。

この件が具体的にどのような手順になるのかは、国税庁からの発表を待っている状態です。

参考:財務省「平成28年度税制改正の解説」における「所得税法等の改正」のうち、項目<12>確定申告書等に添付すべき証明書等の範囲の拡充 を参照のこと

まとめ

政府の規制改革推進の資料から、完全ペーパーレスの年末調整が期待できるかもしれない話をお知らせしました。

規制改革推進会議の資料は、次の内閣府のホームページでご覧になれます。

参考第18回規制改革推進会議 議事次第(内閣府、2017年5月23日)

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