「償却資産申告書」という謎の封筒が送られてきた場合の、記入方法と提出方法を解説します。ミニビジネスを営む初心者向けの解説です。
説明のポイント
- 「償却資産申告書」の書き方
- 東京都のExcelで記入するのがおすすめ(来年も再利用できる)
前回のおさらい
前回の記事では、償却資産とは何か? という点を中心に説明しました。
おさらいをすると、
- 申告は必要。固定資産がなくても必要
- 期限は毎年1月末で、提出先は市町村(東京23区は都税事務所)。税務署じゃない
- 固定資産台帳に載っているものが償却資産。多少の例外あり
ということでした。
何に記入したらよいか?
今回のステップは、償却資産申告書を記入し、提出するまでのステップです。なるべく、効率的な記入・提出を考えましょう。
ズバリいえば、記入する用紙は、Excelのテンプレがおすすめです。(下の図)
Excelで入力すれば、書き損じを気にすることなく、来年も同じシートを使いまわしできるので、効率的です。
東京都(23区)は、公式のテンプレートを用意しています。ここのリンクから「償却資産申告書一式」【一般方式用】のExcelをダウンロードしてください。
じゃあ、東京都(23区)以外の事業者はどうすればいいのでしょう? 実は、Excelのテンプレを用意している自治体は、ごく少数です。
……そして、償却資産の記入用紙は、おおむねどの市町村もほとんど同じ形式です。
このことから、Excelのない市町村では、東京都のExcelを使ってしまうのも、ひとつの手でしょう。(あまり大声ではいえませんが)
ただし、東京都のExcelでは、このままでは宛名の編集ができません。
Excelのメニュー「校閲」から「シートの保護の解除」を押すことで、入力禁止部分も編集することができます。
そして、宛名を「○○市長殿」に書き直せばできあがり。ダメ出しされることはない……はず。
【参考】Excel以外の方法はないの?
【1】送られてきた記入用紙に手書き
都税事務所・市町村から送られてきた、白紙の申告書に手書きする方法もあります。
もっともベーシックな方法で、多くの事業者は、いまだにこの方法で提出していると考えられます。資産の増減が少なければ、手書きでも、大した手間ではないからです。
【2】PDFに入力してから印刷
市町村のホームページで公開されている、償却資産申告書のPDFを使う方法です。印刷する前に、できるだけPDFで必要事項を記入してから、印刷すると、来年も楽に処理できます。
しかし、Excelのほうが処理は早いでしょう。
【3】eLTAX(電子申告)で送信
PCdeskという無料の税務ソフトを使って、eLTAXで電子申告する方法もあります。しかし、ハッキリいって、やめたほうがいいです。操作が難しすぎるからです。
どんな手間がかかるのかは、下記のリンクを見てください。3記事構成なので、途中で読むのを断念することを保証します(笑)
償却資産を記入する
ミニビジネスによくあるのは、償却資産は一切保有していないという状態です。
このため、まず「償却資産の保有がない場合」のお手本を例示します。
留意点
- 4.事業種目の「資本金等の額」は、ほとんどの場合で「資本金+資本準備金」の合計を書きます。ミニビジネスの場合は、資本金だけのことが多いでしょう。単位が百万円単位なので、資本金300万円であれば「3」と書けばOKです。個人事業主の場合は、記入不要です。
- 13.税務会計上の償却方法は、法人は「定率法」です。個人事業主の場合は「定額法」に丸をつけます。
「増加資産」はどう記入する?
償却資産を保有していない場合は、「種類別明細書(増加資産・全資産用)」は提出しなくていいです。
1月1日時点で、前回の申告に比べて、新しく償却資産に該当するものがあるときは、「増加資産」として申告します。
Excelのシートで、「種類別明細書(増加資産・全資産用)」に表示を切り替えられます。
開業から1回目の提出では、1月1日に保有するすべての償却資産を記入します。
増加資産の書き方については、下記の例を参考にどうぞ。
増加資産と減少資産の数字を集計して、申告書に書き写します。
前回の申告で「増加資産」に書いた償却資産は、今年も「増加資産」に書かないように注意しましょう。それとは逆に、前回に比べて無くなった償却資産は、「種類別明細書(減少資産用)」で申告しないと、そのまま課税が続いてしまいます。
「電算処理方式」というのは、紙の申告書で提出する人には関係ありませんので、無視してOKです。
申告書を提出する
Excelに記入した申告書シートを印刷して、都税事務所や市町村に郵送します。
まず、シートは2枚ずつ印刷します。そして、シートのうち1枚には右側に「控」と手書きします。
印刷した申告書シートと、切手を貼った返信用の封筒を入れて、提出先の都税事務所に郵送します。
提出するもの【必須】
- 切手を貼って、自社の住所・宛名を書いた返信用封筒1つ(折り曲げてよい。小さい封筒に82円切手でOK)
- 償却資産申告書 →同じもの2枚(うち、1枚の右上に「控」)
対象者のみ提出するもの
- 【増加資産がある場合】種類別明細書(増加資産用) →同じもの2枚(うち、1枚の右上に「控」)
- 【減少資産がある場合】種類別明細書(減少資産用) →同じもの2枚(うち、1枚の右上に「控」)
- 【個人事業主の場合】マイナンバーカードの表裏両面のコピー、または通知カードのコピーと運転免許証のコピー (※市町村がマイナンバーを把握済みの場合は、提出不要の場合もある)
わざわざ控えも郵送するのは、市町村が「収受しました」というハンコを押して、返信用封筒で返送してくるためです。この控えが、申告書を提出した証拠になります。
これで提出は完了です! おつかれさまでした。
Excelシートは来年も使えますので、なくさない場所に保存しておきましょう。
留意点(東京都23区以外の場合)
この記述は、東京都(23区)の償却資産申告を参考に取り上げています。しかし、償却資産の申告は、各地の市町村により、対応方法が微妙に異なっています。
下記は、市町村ごとの違いの一例です。
- 横浜市 ……提出時に、償却資産の増減がなくても種類別明細書の提出が必要
- 川崎市・名古屋市 ……「減少資産」の用紙がないので、資産が減少したときは、全資産の一覧から二重線で抹消する
- 千葉市 ……「資産がない旨の申告」をすると、その後は申告書の提出を省略できる
- さいたま市・相模原市 ……マイナンバーの記載欄に「***」が書いてある場合は、個人事業主のマイナンバーカードのコピーは不要
まとめ
償却資産申告書の書き方をまとめました。
年1回の提出なので、「あれ、どうやるんだっけ?」という感じのこともあるようです。
このまとめを見て思い出しながら、対応をお願いします。